< 第4回:レポートカード >
12年前のある日
「今年のギルド試験の成績、去年よりも悪かったんで...
才能ないと思うし......ピアノ辞めようと思います......」
って生徒から言われたんだけど......どう思う?
とメールが携帯に飛び込んできました。
「......う〜ん。わかんない......また明日、学校で。おやすみ。」
返信をしてから早くも干支が1周しようとしています。
同じ内容のメールが今届いたら......
携帯置いて......大きく息吸って......コーヒー入れます。
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ギルド検定試験の修了書の裏はレポートカードになっています。
いわゆる通知表です。
審査は1曲に対してACMの50の項目に基づきながら行われます。
(審査項目は公式ホームページよりご覧いただけます。 「こちらから」 )
レポートカードの配列は左側に審査項目が縦に並び、その右に「C
(良)」の行が上下に伸び、そのまた右に「A
(乙)」の行が同じように並んでいます。この「C
(良)」と「A
(乙)」の行は50の審査項目で区切られているため、レポートカードには細かい網目がエクセルのセルのように規則正しく並んでいます。
ここで試験の流れをご説明します。
1. IMMTという音階とカデンツの基礎演奏を披露します。
2. 課題曲を演奏します。
(エントリーレベルや詳細は後日お伝えします)
まず始めに審査員は1曲の演奏に対し、レポートカード内の50項目で"優れている内容"には「C
(良)」、"気になった内容"には「A
(乙)」の行に印をつけていきます。複数曲演奏する参加者は上記の『1.と2.』のステップを繰り返し行い、審査員は各曲に対して判定を行っていきます。
(注意:全ての項目にCとAの判定がつくわけではありません)
演奏が全て終了するとレポートカード内に記録された「C
(良)」と「A
(乙)」の合計数を計算し、ACMの規定に基づいた採点方法で参加者の『総合評価』を割り出します。この総合評価の点数に応じてレベルの合否判定が行われ、合格者のレポートカードには『Pass
(合格)』の隣に「レ印
(しるし)」が入ります。最後に審査員がレポートカード左下に英語でサラサラと演奏のコメントを記入し終わると、次の参加者へのベルが「チリン」と鳴り、試験は他の参加者へと同じ様に続いていきます。
(審査員より英文のコメントはご希望に応じて日本語に訳に致します。)
さて、指導者としては可愛い生徒が一生懸命練習して取り組んだ検定試験やコンクール。判定内容や審査員からのコメントに関して保護者よりも気になったり、審査に疑問を思った経験をお持ちの方もいらっしゃるかと思います......
ギルド試験のレポートカードはピアノ検定試験では類を見ないほど細かい内容が記載されており、審査員が感じたことや総合評価の詳細はレポートカードの内容を確認すれば一目瞭然となるように作られています。ACMは後日、審査内容が記録されたレポートカードを全て指導者の方へお渡しし、内容をご確認いただいています。その目的の一つは評価の内容を各指導者が確認する事で「今後のレッスンの励みやアドバイスになれば」というメッセージが込められています。
「なんだか自分のレッスンの通知表みたいで怖いです!」
と声が聞こえて来そうですが、この続きは次回の「ギルド試験への教本は存在しない事について」でお伝えしようと思っています。
ここで一つ忘れていました。
実は先生から参加者へ、ボーナスポイントを(1つ)あげる事ができる『裏技』があります(^^)
その方法は、4曲以上演奏する参加者の選曲を「バロック」「古典派」「ロマン派」「現代」の4つの異なる時代から選ぶ事で「バランスのとれたレッスン内容」と判定され、レポートカード内「Repertoire(課題曲)」の項目に1つ「C(良)」ポイントが加算されます。(4曲以下の生徒さんには残念ながら対象外となってしまいますが...)
たかが1点、されど1点。
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すでに過去の参加者は口にしています。
「この前はCが33個で、Aが2個だったんだよね〜!頑張ろ〜!」と......
そしてそのうち出てくるかもしれません
「先生、前回よりも成績悪かった〜!(涙)ピアノ辞める!私は才能ない!」
とプリプリ、プンプン言う真面目な子...
しかし今だったら
「まぁとりあえず、お座りなさい......一緒にレポートカードを見てみよう。」
と心の中で、手当ての準備を万全にしながら、
レッスンで反省会を行うと思います。
最後に今回のまとめを。
ギルド試験のレポートカードは、
細かい内容が記されている事で審査員が感じた事と同時に、
参加者の総合評価の詳細が一目瞭然となるように作られています。
「良いところはドンドン評価し」
「もう一つなところは、しっかり指摘」
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次回は参加者のレポートカードから見えてくる「ギルド試験には教本が存在しない理由について」です。
本日もお読みくださりありがとうございました。