今年は第15回、ヴァン・クライバーン国際ピアノコンクールが開催されました。
2009年に行われた第13回ヴァンクライバーン国際ピアノコンクールでは当時上野学園で学んでいた辻井さんとカーティス音楽院の学生だったチャン・ハオチャンの2人が見事に優勝しました。
アメリカでは「目が見えないから1位になった」「目が見えないピアニストを2位にした際・・・」など、演奏の素晴らしさ以外の事を議論する人もいましたが・・・
前回ご紹介したクリス・サルナの存在を知っているハワイの人は辻井さんの事を「amazing!」と讃えていました。
クリス・サルナの事を書くきっかけとなった、細川元総理の奥様佳代子さんの「(ハンディーキャップを持った)彼らが幸せになるか、不幸になるかは、どれだけ理解のある家族のもとに生まれるか。どれだけ理解のある国に生まれるかによって人生の行き先が決まってしまう。少しでも優しい手を差し伸べていけば、幸せな人生を送ることができる」という言葉を元に、今回はクリスがどのように「大学の授業をクリアしていったか」をご紹介します。
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アメリカでは日本でいう「音大」に進学しなくても「4年生の総合大学の音楽科」に通うことである程度のレベルまで音楽を学ぶことができます。州立の総合大学でBachelors Degreeを取得し、卒業後に私立のイーストマンやジュリアードでMasters DegreeやDMAを取得したり、進路は本当に様々です。
総合大学と音楽大学の違いは何?と聞かれると、一言で説明する事は難しいですが、総合大学に通っての音楽科に進学すると、学校側が卒業のために定めたrequirementsが音楽だけではなくなります。
例えばハワイ大のMusic Departmentを卒業するには学部が定める80単位をに加え、学校側が定める卒業必修科目には以下のようなコース(クラス)が含まれます。
1:ハワイ、アジア、太平洋についての教科:1コース
2:人種問題について(300又は400番代のクラス):1コース
3:Oral Communicationというで個人でスピーチなどをして採点をしてもらうクラス(300又は400番代のクラス):1コース
4:Writing Intensitiveという論文などを書くクラス:5コース
その他第2ヶ国語、数学、など
クリスの場合、『教科書を読む』というごく一般的な宿題がクラスで出た際、教科書を点字にする業者に頼んで、教科書を作り直してもらう必要がありました。アメリカで生活をして現地の仕事の遅さを肌で感じた事のある先生方はお気づきかもしれませんが、この点字の教科書は「ごめーん!おくれたー!」と軽いノリで納期より2、3ヶ月遅れて到着する事は頻繁にありました・・・1セメスターで受講する教科書全てを点字にしなくてはならないので、同じクラスを取っている友達が手伝って教科書を音読してあげる方が遥かに効率がよかったです。
「試験の時は別室でTAに答えを書いてもらったり、教授が質問しそれを口頭で答える。」ということを卒業するまで行っていました。
何度も門下の先生に「ピアノだけ演奏したい!勉強をしたくない!」と弱音を吐いた時もありましたが「絶対に学校は辞めない事!卒業したらその意味がわかるから、とにかく頑張れ!」とお尻を叩かれ無事卒業。
そんなクリスの大学生活を目の当たりにしていたので・・・
日本の大学のことはわかりかねますが、
クライバーンに参加した際、辻井さんが学生と聞き色々とあっただろうな。と勝手に考えてしまいます。
彼の優勝は色々な意味でたくさんの人に勇気を与えたかもしれません。
次回はクリスがどのように「課題曲」に取り組んでいたかをご紹介します。
本日もお読みくださいましてありがとうございました ^^
クリス・サルナ公式ホームページ
http://www.chriscernamusic.com/about